この記事ではデッキ構築における同カードの採用枚数について考察していきます。
デッキにはルール上入れることができる枚数上限があります。MTGであれば60枚以上のデッキに同じカードを4枚まで入れることができます。実際に、デッキ構築および調整の段階で入れたいカードを何枚採用するかはどのようにして決めるべきでしょうか。
採用枚数を掘り下げる記事はあまり見たことがないので今回記事を書いてみることにしました。
確率についても記事の後半では扱っていきます。そこまでは必要ではないよという方も該当する部分を読み飛ばして頂き、ひとつの参考にしていただければ幸いです。
この記事の目次
採用枚数の感覚
ここではデッキに採用する枚数毎にどのようなことを考えているかを見ていきます。普段デッキを作る際は、経験から来る感覚で決めていることも多いと思います。
デッキ構築にはいろいろな考え方があると思いますが、いつ引いても強いカードは4枚採用すべきですが、強く使える条件・場面が状況によるカードは採用枚数を減らすことを考える必要があります。私の場合は下記のようなイメージで採用枚数を調整しています。
- 1枚採用:引くかもしれない
- 2枚採用:引けなくても問題ない
- 3枚採用:ゲーム中に1枚引ければ十分
- 4枚採用:デッキの主力
このような感覚でデッキへの採用枚数を検討しています。それぞれの採用枚数における特徴をみていきましょう。
1枚採用:引くかもしれない
下記のようなカードはデッキに1枚だけの採用となることが多いです。
- カードの能力が十全に発揮されれば1枚でゲームを決めることができるカード
- 戦場の状態などの条件や下準備が必要であるカード
- マナコストが極めて重いがゲームを決定づけるカード
- 1枚しか採用していないので、特に序盤でのゲームへの影響は少ないカード
- 絶対に2枚は引きたくないカード
1枚しかデッキに入れないので、絶対に2枚以上引くことがないというのもポイントです。
《原初の潮流、ネザール/Nezahal, Primal Tide》などの7マナ以上の重量級フィニッシャーはこれに該当しやすいです。《原初の潮流、ネザール》はコントロール同士の対戦において対コントロールとして能力を発揮するカードで、1枚でゲームを決めることができるカードになっています。伝説なので重ね引きのリスクもあるので採用枚数は絞りたいカードです。
2枚採用:引けなくても問題ない
下記のようなカードはデッキに2枚だけの採用となることが多いです。
- 状況に依存するカード
- マナコストが重いがゲームを決定づけるカード
- 分割採用や追加採用のカード
例えば伝説のクリーチャーであって、戦場に1枚しか存在できないなどの状況に依存してしまうカードはこれに該当します。プレインズウォーカーも該当することが多いです。
デッキにこのカードを見つけることができるサーチまたはドローソースが入っている場合も採用枚数を少なくできます。特にミッドレンジやコントロールのフィニッシャーが該当しやすいです。
また、単体除去を汎用性を上げるために散らして採用する場合もこの枚数に落ち着くことがあります。
マナコストが重いがゲームを決定づけるカードとしては《聖域の番人/Sanctuary Warden》などが該当します。マナコストが6マナと重いですがカードパワーがかなり高く、ゲームを決定づけます。
3枚採用:ゲーム中に1枚引ければ十分
下記のようなカードはデッキに3枚だけの採用となることが多いです。
- 序盤に複数枚は引きたくないカード
- 状況に多少依存するカード
- マナコストが高いカード
基本的には強力な伝説のクリーチャーやプレインズウォーカーが該当することが多いです。高いカードパワーを持ち引きたいカードであるものの、複数体は戦場に出せないといった制約のあるカードです。
《黙示録、シェオルドレッド/Sheoldred, the Apocalypse》などは制圧力が非常に高いカードで、盤面に残ることが勝ちに繋がります。基本的に戦場に出た場合、対戦相手としては除去が必須のカードになるので、たとえ2枚引いたとしても除去された後の後続として役割を持てます。
4枚採用:デッキの主力
下記のようなカードはデッキに4枚の採用となることが多いです。
- 極めて強力なカード
- いつでも引きたいカード
- 初手に2枚あってもよいカード
- 複数引くことで強くなるカード
4枚採用はデッキの中核を担う主戦力が該当しますね。
具体例としては《鏡割りの寓話/Fable of the Mirror-Breaker》はかなり分かりやすく4枚採用の条件に合致しています。スタンダードにおいては赤を使うデッキはイコールで《鏡割りの寓話》が4枚採用されているといっても過言ではないほどです。《鏡割りの寓話》は表面・裏面どちらも強力で、Ⅱ章ではルーティング能力があるためいつ引いてもよいし初手に2枚あってもよく、裏面を複数合わせることでコンボにもなっています。
採用枚数と確率
デッキに何枚採用したら、どれくらいの確立でカードを引くことができるようになるでしょうか。ここでは高校レベルの数学を使って確率を探っていきたいと思います。マリガンなども考慮すると正解とは言えない確率になるのであくまで目安として使っていきます。
採用枚数と経過ターン毎に引く確率の関係
早速ですが、計算式は「1-{(x-z)Cy/xCy}」、x=デッキ枚数、y=引く枚数、z=欲しいカードの採用枚数で計算することができます。デッキにX枚採用したカードが経過ターン毎にどれくらい引けるようになるかを計算した表をまずは作成してみます。6ターン目はミッドレンジではフィニッシャーが出ていて趨勢が決まっているターンなので、6ターン目までを記載してみます。
表1 採用枚数と経過ターン毎に1枚以上引く確率
初手7枚に採用したカードがを引く確率はそれぞれ、1枚:12%、2枚:22%、3枚:32%、4枚:40%となっています。6ターン目に採用したカードを引く確率はそれぞれ、1枚:20%、2枚:36%、3枚:49%、4枚:60%となっています。6ターン目までのゲーム中に引く確率をまとめると下記のような形になります。
- 1枚採用:12%~20%(引くかもしれない)
- 2枚採用:22%~36%(引けなくても問題ない)
- 3枚採用:32%~49%(ゲーム中に1枚引ければ十分)
- 4枚採用:40%~60%(デッキの主力)
経験則などでデッキに入れていた枚数と確率はある程度イメージが一致したでしょうか。
続いて、デッキにX枚採用したカードが経過ターン毎に2枚以上引く確率を計算した表を作ります。2枚採用などでは重ね引いて欲しくないが、4枚採用だと2枚以上引くことができるというような状況を検討します。
表2 採用枚数と経過ターン毎に2枚以上引く確率
6ターン目までのゲーム中に2枚以上引く確率をまとめると下記のような形になります。
- 1枚採用:0%
- 2枚採用:1.2%~3.7%(引けなくても問題ない)
- 3枚採用:3.4%~9.9%(ゲーム中に1枚引ければ十分)
- 4枚採用:6.3%~17.5%(デッキの主力)
3枚採用では6ターン目に9.9%の確率で2枚引くことが分かりました。10回に1回は重ね引きすることが分かります。これが高いと取るか低いと取るかは難しいところです。除去耐性があって重複しても意味のないカードを考えてみると、10回に1回無駄引きになるというのは無視できない確率になっているように思えます。
コンボデッキにおける確率
確率を算出して意味があるのか?という問いに対する明確な答えとしては、特にコンボデッキが挙げられます。コンボデッキにとって確率は非常に重要な要素で、コンボカードが揃うことがイコール勝利に繋がります。大袈裟にいえば、揃う確率が5%上がるならば、勝率が5%上昇すると言い換えることもできるでしょう。元々勝率が50%だったデッキがこれによって勝率が55%になったとしたら大きな進歩を感じないでしょうか?
コンボデッキにおける2枚コンボの場合は2種類の同様のカードが8枚づつあるのが理想といわれています。正確な計算はここではしませんが、上記の表1から4枚づつ採用したカードが初手にある確率は40%となっています。これにより、2種類のカードが約15%前後の確率で初手にありそうだということが分かります。同様に8枚づつ採用した場合は約40%前後となります。4枚づつではコンボのみを勝利手段とするのは厳しそうですが、8枚づつあれば十分機能しそうな確率になっているでしょう。
マナカーブ・マナベースへの応用
採用枚数の確立はマナカーブへも応用することができます。
例えば、2マナのカードを合計で10枚採用した場合に2ターン目に2マナのカードが手札に来る確率はどの程度になるでしょうか。この確率は安定して2ターン目の動きができるかどうかという重要な確率になってきます。10枚採用したカードを1枚以上引く確率は表1から約74%になります。およそ4回に1回は2マナのカードが来ずに初動が3ターン目になるという確率です。2マナの初動を80%以上確保したければ12枚以上、90%以上確保したければ16枚以上2マナのカードを採用する必要があります。
これはデッキ構築におけるよくある失敗例のひとつである重いカードを採用しすぎて動けないといったことへの意識改善に繋がると思います。
また、採用枚数毎の確立はマナベース(土地枚数)へも応用することが可能です。これに関してはこちらの記事が参考になると思いますので、是非読んでみてください。
プレイングへの応用
デッキへの採用枚数についてはプレイングへ応用することができます。昨今のトーナメントシーンではデッキリスト公開制の大会も多くなっています。つまり、相手のデッキにどんなカードが何枚採用されているのかが事前に分かるようになりました。これによって、採用枚数に応じてケアするかしないかを考える際に参考にできます。
例えば対戦相手のデッキに《かき消し/Make Disappear》が3枚採用されていたとしましょう。2ターン目にこれをケアして2マナのカードをプレイしないべきでしょうか。
対戦相手が2ターン目に3枚積みのカードを持っている確率は約35%です。つまり、対戦相手は《かき消し/Make Disappear》を持っておらず、打ち消されない可能性の方が2倍近くて圧倒的に高いです。もちろん手札状況によってプレイするかしないかを検討する必要が別の問題としてありますが、この確率はプレイへの参考にすることができます。
しかしながら、これが6ターン目となると対戦相手が3枚採用のカードを持っている確率は約49%と五分五分の確立になってきます。明らかに2マナ浮かせるような動きをしているようであればケアが必要になってくるでしょう。
まとめ
今回の記事ではデッキ構築における採用枚数について深堀してみました。
この記事でみなさんに新しい視点をお届けできていれば幸いです。
ここまでお読み頂きありがとうございました。参考文献は下記になっておりますので、是非参考文献にも目を通してください。
参考文献
- デッキ構築入門:mtg-jp