MTGのプロプレイヤーである茂里憲之 氏の「デッキビルダーの練習論、あるいは回したことのないデッキについて堂々と語ること」という記事に触発されたので「マジック:ザ・ギャザリング」における「練習」について自分なりに記事を書いてみます。
(記事の有料部分はこの記事を書き終わった後にゆっくり読みたいと思います。)
以前に予選ウィークエンドの調整録(2023年の1月アルケミー、4月エクスプローラー、6月ヒストリック)という形で練習の反省を書いていた私としては共感を得る内容も多かったです。そのため、自分なりの「練習」についてをこの機会にアウトプットしておきたいと思います。
私自身、「紙マジックもやっていて競技プレイヤーを目指す!」という感じではなく、MTGアリーナでまったり遊んでいる中で高い勝率を目指すという競技レベルにまでは至っていないレベルのプレイヤーの話だとという前提の内容になっています。
特に「忙しくて時間が足りない!」という方に向けた情報を書いていきたいと思っています。それでもよければ是非見ていってください。
この記事は以下のような疑問について考えていく内容となっています。
- なぜ練習について考える必要があるのか?
- そもそも練習とは何か?
- 今までの練習とは?
- 現代の練習とは?
この記事の目次
MTGの練習時間を確保するのは難しい
現代においては「マジック:ザ・ギャザリング」の練習に使える時間というのは非常に限られています。
すぐそばに娯楽が溢れているため他の楽しいコンテンツを消費したり、単純に余暇が少なかったりということもあるでしょう。
MTGの練習以外にもプライベートや家族サービスなどを優先しなければならないこともあると思います。
そのような時間的制約がある中でわざわざ「マジック:ザ・ギャザリング」をプレイするのはかなり「マジック:ザ・ギャザリング」にハマっているプレイヤーです。さらに言えばその練習に時間を割くのはそもそも時間的に厳しいものです。
私のような欲張りなプレイヤーは長時間の練習をしたくないけれど大会で良い結果は残したいと常々思っています。そんなうまい方法は早々存在しないのですが、何とかそこに縋りたい気持ちでいます。100%そこにたどり着くことができなくても近いラインを探すことはできるかもしれません。この記事ではそれを模索していきたいと思っています。
このような「マジック:ザ・ギャザリング」に割ける時間が少ない中でいかに効率よく練習するかが私たちには重要になってきます。
(普通に時間がたっぷりあったとしても効率よく練習する意味はあります。)
効率よく練習するためには「練習」についてよくよく考えて取り組む必要があります。
そもそも練習とは何か
「マジック:ザ・ギャザリング」における練習についてどのようなイメージを持っていますか。
そもそも「マジック:ザ・ギャザリング」の練習とはカジュアルなゲームプレイや、MTGアリーナであればミシックに到達するという段階のさらに先にあるものです。
ミシック帯の上位#250を狙ったり、予選プレイイン、予選ウィークエンドのような大会で好成績を残すというレベルの目標がまずあって、そこで勝つために練習するということになります。
次の大会で優秀な成績を残したいというような高い目標があり、さらにモチベーションがないと「マジック:ザ・ギャザリング」の練習をするという段階まで至りません。
ここでいう練習は「マジック:ザ・ギャザリング」において比較的競技志向が強いものだということは意識しておいた方がいいかもしれません。
MTGプレイヤーの中では競技プレイヤーは少数でしょうから、練習をしているプレイヤーの数も限られています。
次に「マジック:ザ・ギャザリング」における練習というのが何かを考えてみます。
「マジック:ザ・ギャザリング」における練習は「特定のデッキをプレイする」という文字通りの練習だけが練習ではないと私は考えています。
練習には下記のような項目が挙げられると思います。
- 環境の把握
- デッキ選択と構築
- プレイング練習
「孫子」の格言ですが「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」ということですね。
次の項目からはそれぞれについて詳しくみてみましょう。
練習①:環境の把握
まずは、環境の事前調査を行います。プレイするフォーマットにおいてどんなデッキが存在していてどのようなデッキが強いのかを把握しておくことは非常に重要です。
これによってどのデッキを選択するのかにも当然影響してきますし、プレイングにも波及してきます。
今現在のパイオニアのように、ある程度成熟しているフォーマットではメタゲームの変化が比較的少ないため特に重要です。
具体的にどのように環境を把握するかというと、大会実績を確認したり実際に対戦をして肌感覚でメタゲームを把握するというような手法があります。
この環境の下調べが不十分であると弱いデッキを選択してしまったり、調整が上手くいかないなどの問題を抱えることになります。
逆に変化の大きいスタンダードなどにおける新セットのリリース直後のような場合はメタゲームが読めないこともあり、環境の把握ができないということも珍しくありません。
この場合においては練習の質に加えて、下調べの不足を量でカバーする必要も出てくるでしょう。
練習②:デッキ選択と構築
環境をおおよそ把握できたら次はどのデッキを使うのか、そのデッキを練習するのかを決める必要があります。
この段階でデッキの数を絞っておかないと単純に検討事項が増えてしまい2倍、3倍の練習量が必要になってしまいます。
デッキの選び方は以下のようなものがあります。
- 環境で最も勝率が出ているデッキを選択する
- 環境で最も支配率が高いデッキに強いデッキを選択する
- 自分の得意なデッキを選択する
最も勝率が出ているデッキを選択するというのは分かりやすいデッキ選択の理由です。
デッキを練習することでプレイ精度を向上させ、その勝率を出せるようになれば結果を残すこともできるでしょう。
環境で最も支配率が高いデッキに強いデッキを選択するというのはメタゲームを読んだデッキを使うということです。
最も遭遇率の高いデッキに高い勝率を出せれば他のデッキに少し弱くとも問題なく勝ち進められるという考え方です。
自分の得意なデッキを選択するというのは自分の中で得意なデッキや苦手なデッキが存在し勝率にも影響してくる場合の選択肢です。
アグロ、ミッドレンジ、コントロール、コンボなど様々なアーキタイプが存在しますが、普段から回しているアーキタイプや得意としているアーキタイプはプレイ精度の面で普段使用していないアーキタイプより優れている傾向があるので、それが高い勝率を出せるデッキを選ぶことに繋がります。
既存のデッキを調整する場合は大きくリストを変えることは稀だと思いますが、オリジナルのデッキを組んだ場合は方向性を変更するなど大きな変更があり得ます。
かなり難しいのが新しいオリジナルのデッキを構築するというシチュエーションです。
成熟したフォーマットではこの状況になることはほぼありませんが、プールの狭いフォーマットの新セット追加後や影響力の高いカードが含まれるセットの追加後などが該当します。
このような環境では強いデッキの情報をできるだけ早くキャッチするか自分でオリジナルデッキを作るかになります。
練習③:プレイング練習
練習と聞いて一番想像しやすいのが実際にデッキをプレイすることです。実際のプレイを通してプレイ精度を向上させるというのが目的になります。
現代においては有名配信者やプロプレイヤーの配信を見てプレイングを学ぶということもできます。
デッキをプレイして得られるものは下記のようなものがあります。
- デッキの回し方
- デッキの立ち回り
- デッキの相性
デッキの回し方というのはシナジーやコンボなどの手順をしっかり把握することが第一です。
ある程度はデッキを回す前にデッキリストを見ながら検討しておく必要がありますが、実際に回してみて手順を確認していくという作業になります。
デッキの立ち回りは対戦相手のデッキの種類に応じて変わってきます。
例えば除去の入っていないデッキ、除去ばかりの除去コントロールが対戦相手であった場合は立ち回りが変わるのは分かりやすいと思います。
また、環境の把握の延長線上で、対戦相手のデッキリストを把握しておき立ち回りに活かしましょう。
デッキの相性はプレイしている中で感じることができる要素です。相性差をある程度理解できればサイドボードにそのデッキの対策をどれくらい取るかなど調整に活かすことができるようになります。
今までの練習とは
練習と言われてイメージするのは実際にデッキを回すプレイングをイメージする方も多いと思います。
デッキを実際に回してみて対戦相手のデッキやプレイを学んでいくというプロセスになります。
質ももちろんですが、量が大切だと考えている方も多いのではないでしょうか。
茂里憲之 氏の「デッキビルダーの練習論、あるいは回したことのないデッキについて堂々と語ること」という記事に下記のような問題提起がありました。
(無料部分からの引用です。)
そもそも全体で何マッチの練習が可能であるか。仮にセットのリリースからイベントまで4週間があったとしよう。平日に2時間、休日に4時間練習できるとする。専業プロではない一般プレイヤー、つまり大半の人や、専業プロを続けようと思っていない筆者自身の今後の状態だとその程度だろう。30分あたり1マッチだとすると、144マッチ分の時間がある。
(中略)
パイオニアで有力なデッキタイプは種類が多く、10以上存在する。ここで144に使用率をかけると最多のラクドスミッド相手とは33.5マッチとそれなりの数の対戦ができる。しかし10番手のグルール機体(TOP8にも入った必ず対策する必要のあるデッキ)には3.2マッチ、また使用者2名の期待値だと1回の対戦しか経験できないはずのボロス召集もTOP8に入っている。
1ヶ月の間で平日に2時間、休日に4時間の練習をした場合、30分/マッチだと144マッチ練習できるという計算です。
多数のアーキタイプがあるメタゲームで10番手のアーキタイプ相手には3マッチ程度しか対戦できないということになっています。
月に72時間の練習時間を確保したとしても、特定のマッチアップとの練習は限られてしまうということが分かると思います。
果たしてこの限られたマッチアップの間にデッキ相性や立ち回りを練習するのに十分な試合数を確保できると言えるのでしょうか。
実際にデッキを回す以外の方法でもマッチアップについて理解して予測しておくのがベターです。その方法については以降の記事で考えていきます。
現代の練習への準備
さて、突然ですがここで問題です!
2023年7月現在のパイオニアのゲームです。対戦相手は1ターン目《寺院の庭/Temple Garden》から《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》をプレイしてきました。対戦相手のデッキは何でしょうか?
答えは浮かんだでしょうか。
正解は「セレズニアエンジェル」です。
《寺院の庭》をセットしたということはセレズニアカラーのデッキかそれより多色のデッキということになります。
この時点で「エニグマ」、「Niv to Light」、「セレズニアエンジェル」に絞られます。
さらに、《ラノワールのエルフ》をプレイしたということで、オリジナルデッキを除いたメタゲームに存在するデッキであれば「セレズニアエンジェル」でほぼ確定となります。
ここで重要なのは正解すること自体ではなく、正解に至るためのプロセスとその後の対応やプレイングです。
これに回答するための思考としては以下のようなものが必要になります。
- メタゲームに存在するアーキタイプの把握
- アーキタイプ毎のデッキリストの把握
- デッキ毎のゲームプランの理解
正解が分かった方はこれらの要素を言われずとも理解して実践していることになります。
どんなデッキが環境に存在するのか把握していて、そのデッキリストを知っていて、どのようにプレイするのか分かっている状態です。
これらの思考ができていればプレイ精度が向上することは明らかです。
ただ、このプロセスに至るには前提条件があります。
基本的にはある程度メタゲームが固まってきていて、デッキの90%近くが固定されたリストが出回るようになっていることです。
この現象は近年の情報伝達、環境究明が高速になったことにも起因してスピード感は増しています。
冒頭でもお伝えした通り現代人は「マジック:ザ・ギャザリング」にコミットできる時間が限られています。なので、デッキを調整できる時間が少なく、一般に知られているリストから乖離していることは稀です。ましてや、オリジナルデッキを持ち込んでくるプレイヤーはかなり限られていると考えていいでしょう。
この項目でお伝えしたいことは事前の環境調査によって、アーキタイプ、デッキリスト、ゲームプランまでは実際にプレイすることなく事前に調べておくことが可能であるということです。
現代の練習は情報収集から
時間の取れない中で練習を効率よく進めるためには何が必要になるでしょうか。
現代の練習における事前準備として以下のようなものが必要になると前項にも書きました。
- メタゲームに存在するアーキタイプの把握
- アーキタイプ毎のデッキリストの把握
- デッキ毎のゲームプランの理解
プレイング練習の前段階で情報を事前に把握しておくにはMTGの情報サイトやSNSを活用して情報を集める必要があります。
よく周知された内容ですが、現代はSNSなどの普及によって昔と違い情報の伝達速度が早くなっています。
また、これによって以下のような内容が解析・分析されて早々に発信されています。noteでも記事をよく見ることができます。
- デッキ分布(Tierリスト)
- デッキリスト
- 相性表
- サイドボードガイド
これらの情報を収集しておけばプレイング練習の効率が上がり、練習の時間を短縮することができるでしょう。
現代の練習の時間配分
ここまで述べて来たことを簡単にまとめると「練習時間は少なく限られているが、情報の入手は容易になっている」ということが言えると思います。
以前より手に入りやすくなった情報を上手く使わない手はありません。
今までの練習といえば、多少の前後はあれど、
「環境の把握」:「デッキ選択と構築」:「デッキをプレイする」=1:1:8
くらいの割合であったと思います。
このようにデッキをプレイする時間にかなり時間をかけるのが一般的な練習方法だと思います。
しかしながら、時間の確保が難しい現代においてはこの方法では通じないでしょう。
今までの練習方法をそのまましていては、単純にデッキをプレイする時間が不足することになり「特定のアーキタイプとの練習が足りなかった」というような事態に陥ることでしょう。
そもそも、多数のアーキタイプが存在する環境では少数派であるアーキタイプとのマッチアップは限られていて、例え長時間プレイしたとしても十分なマッチ数が確保できません。
情報の入手しやすくなった現代の練習では、
「環境の把握」:「デッキ選択と構築」:「デッキをプレイする」=2:1:2
くらいの割合で練習する必要があると私は考えています。
もし、練習時間を半分しか確保できないのであれば、実際のゲームプレイの時間は削るしかありません。
その分を「環境の把握」に時間を割り振ることで補ってあげるのがよいでしょう。
練習における失敗の具体例
実際の予選プレイイン、予選ウィークエンドでの私の反省点を具体例として出してみます。
2023年1月のアルケミーでは、「対戦相手のサイドボーティングに対応したサイドボーティング」という課題がありました。
これは情報収集における「アーキタイプ毎のデッキリストの把握」と「デッキ毎のゲームプランの理解」が足りていなかったことが問題です。これはゲームプレイングというよりは事前の情報収集で検討しておかなければならない事項でした。
2023年4月のエクスプローラーでは、「デッキ選択が遅いことによる練習不足、調整不足」という課題がありました。
本当に時間が足りなかったという状況もなくはないと思ってしまいますが、環境理解が足りていなかったという問題が浮き彫りになりました。
2023年6月のヒストリックでは、「調整については満足したが、かなり長い時間の調整を要した」という課題がありました。
マッチアップ毎の理解が足りておらず、ゲームプランを通してどのようにデッキを調整すればよいかというのが分かっていなかったのが問題でした。恐らく、自分のゲームプランと対戦相手のゲームプランが分かっていれば調整にかかる時間は短く済んだろうと考えています。
このように考えてみるとやはり下記の3点が重要というのが浮かんできたように思います。
- メタゲームに存在するアーキタイプの把握
- アーキタイプ毎のデッキリストの把握
- デッキ毎のゲームプランの理解
次の項目からはこれらがどのようなものか考えていきましょう。
現代の練習:アーキタイプ、デッキキリスト、ゲームプランの把握
現代の練習方法ということで下記の3つをピックアップします。
- メタゲームに存在するアーキタイプの把握
- アーキタイプ毎のデッキリストの把握
- デッキ毎のゲームプランの理解
これらの項目はそれぞれに相互作用があるので、まとめて考えていきます。
メタゲームに存在するアーキタイプの把握はまず第一に行うべきことです。アグロ、ミッドレンジ、コントロール、コンボなどどのようなデッキを構築できるのかを調べます。
アーキタイプを把握することはメタゲームを理解する助けになります。どのような戦術、戦略を取るのかを理解することができれば、相手のプレイを予測したプレイングができるようになります。
相手のデッキリストを把握しておくことでサイドボードまで効果的に使用することができます。サイドボーディングもデッキリストの把握、ゲームプランの理解ができていないと難しいです。
当たり前ですが自分のデッキリスト、ゲームプランの把握も練習に含まれます。
これによって、実際のゲーム中に次にこのカードを引けば逆転できるというような考え方ができるようになります。もう少し言えばXターン後までに盤面を作り、特定のカードを引ければ勝利できる、その盤面を作るためにはAをプレイしてBしておく必要があるというようにプレイングに活かすことができます。
ゲームプランの理解はゲームプレイ精度の向上、効果的なプレイングやリソースの使い方の最適化に役立つでしょう。
これらの事前知識を得ておくことで、チーム調整などの意見交換においても情報共有がスムーズになるというメリットがあります。
まとめ
上手くまとめられなかった点もあるかと思いますが、この記事が「マジック:ザ・ギャザリング」における「練習」について考える機会になれば幸いです。