リミテッドのマリガンについて確率から考察してみた

この記事ではリミテッドにおけるマリガン基準について考察していきます。

マリガンは悪い手札であった場合に行うことで、より望ましい手札でゲームを始めることができるようになります。手札が減ることでリソース不足になることなどデメリットはあるものの、非常に重要な要素となっています。

 

ここでマリガンする場合について一度簡単にまとめておきたいと思います。

 

マリガンする場合
  • 土地が少ないとき
  • 土地が多いとき
  • 片方の色の土地しかないとき
  • 2,3マナのカードがないとき
  • カードが弱いとき

 

配信などで上手い人のプレイを見ていて、「これキープしちゃうの?」とか「これはキープしないんだ」とかマリガンについて疑問に感じることがときどきあります。

そういった疑問について、確率と絡めながら考察することで、いっしょに考え方と意識を改革していきましょう!

 

※前提条件:

  • この記事では土地の枚数はリミテッドの定石とされる17枚の場合を想定しています。
  • MTGアリーナのBo1における初期手札の補正は考慮していません。
  • 先手を想定したカードを引く枚数での確率を計算しています。

 

初手の土地の割合はどれくらいか

リミテッドに限りませんが、初手の土地の枚数というのは非常に重要な要素です。まずは純粋に土地の枚数だけでどれだけマリガンする必要があるか考えてみます。

デッキが40枚で土地が17枚のとき初手に引く土地の枚数はどれくらいでしょうか?ちなみに、40枚デッキで土地17枚というのは、60枚デッキであれば土地25.5枚に相当します。

計算式は比較的簡単で「1-{(x-z)Cy/xCy}」、x=デッキ枚数、y=引く枚数、z=欲しいカードの枚数で計算することができます。土地を引く枚数の確率だけを計算するようなレベルであれば、エクセルで計算可能です。web上にある確率計算ツールを使ってもいいと思います。

 

図 初手の土地枚数とその確率

 

確率については全く計算はする必要はないので、結果だけ見ていってください。リミテッドのデッキ40枚のうち土地が17枚のときの初手にくる土地の枚数と確率は上図のようになっています。

 

土地が0枚、1枚の場合はかなりの確率でマリガンすることになるでしょう。トリプルマリガンだとしぶしぶキープすることもあるかもしれません。ここのボリュームが約10%。

土地が2枚、3枚、4枚のときはキープできそうです。土地2枚のときは3枚目の土地を引かないというリスクは考慮しなくてはなりません。ここのボリュームが約80%です。

土地が5枚、6枚、7枚の場合もかなりの確率でマリガンすることになると思います。ここのボリュームは約10%です。ちなみに、手札がすべて土地になる確率は0.1%程度です。非常に稀なのでこれに当たった方は宝くじを買ってみてください。大当たりが引けるかもしれません☆(ゝω・)vキャピ

 

初期手札の「質」を考慮していない単純な土地枚数だけを考えた段階で約20%、5回に1回ほどはマリガンする可能性が高いことが分かりました。土地の枚数だけでこのマリガン率というのは思っていたより高い確率でマリガンになると感じました。みなさんはどうでしょうか?

 

次の項目からはそれぞれの場合について詳しく掘り下げていきたいと思います。

 

スポンサーリンク

初手の土地が2枚のとき

初手に土地が0枚または1枚の場合は土地を連続で引かなければ負けに直結するので、そんな低確率に期待することなくマリガンすることと思います。

それでは、初手の土地が2枚のときはどうでしょうか。土地が1枚でも欲しいので、土地を引くことができる確率を考えてみます。

 

図 土地を引くことができる確率

 

土地を引くことができる確率の計算結果は上記のようになります。

2ターン目に土地を引ける確率は46%です。初手に2枚土地があれば、2ターン目は土地を引けなくてもままセーフです。

3ターン目までに土地を引いている可能性は71%となります。ここで土地を引けなくても次で土地を引ければまだ挽回はできそうです。

4ターン目までに土地が引ける確率は85%となります。逆に言えば、15%の確率で土地が引けないため、その場合はほぼゲームエンドといっていいでしょう。こちらは何もできないのに、対戦相手は4マナのカードをプレイしてきます。

 

15%の確率で敗北と言われるとマリガンした方がいいのでは?と思えますが、初手に土地が2枚だけの場合というのは初手全体の25%を占めています。4回に1回というのは無視できる確率ではありません。初手に土地2枚の状況でマリガンしていては、土地が多かったり少なかったりする場合と合わせて、マリガン率が40%を越えてしまいます。それは流石にマリガンしすぎな気がします。これのキープ率と勝率の関係についてはもっと調べてみたいところですね。

 

初手の土地が5枚のとき

初手の土地枚数が3枚、4枚のときは満足キープができると思うので、そちらは一旦スキップしましょう。

ここでは、初手の土地が5枚のときを考えてみましょう。

 

スーパーざっくりいうと大体9ターンくらいでリミテッドのゲームは終わる傾向にあります。「17Lands」の「Play / Draw Advantage」参照方。

そのとき、初手7枚なので毎ターンのドローで8枚、全部で15枚引くことになります。デッキ40枚のうち土地が17枚ということで、期待値的には引けるスペルの枚数はおおよそ8~9枚なことが多くなります。これは1ターンに1枚唱えていけば、9ターン目頃にはちょうど使い切ることができる枚数ですね。

初手が土地5枚でスペルが2枚ということは、先ほどの考え方を踏まえると毎ターンの8枚のドローのうち6枚以上がスペルであることが要求されます。

 

図 初手の土地が5枚のとき

 

計算すると6枚以上スペルである確率は37%。これを逆に取れば、マナフラッドする確率が6割以上あるということになります。

もちろんハンドの「質」次第だとは思いますが、初手に土地が5枚の場合はマリガン推奨といったところでしょうか。

 

初手に片方の色の土地しかないとき

初手で片方の色しかでない場合は、一度マリガンするかどうか検討すると思います。そして、マリガンしなくても戦えるかどうかを判断してキープするかどうかを決めることになるでしょう。

ここでは具体例を出して検討してみましょう。

 

図 初手に片方の色の土地しかない例

 

サンプルハンド①は青が出る土地が3枚、2,3マナの青のカードが2枚、4,5マナの赤のカードが2枚となっています。このハンドでは2,3ターン目の動きが約束されていて、赤が出る土地を4ターン目までに引けていれば4,5マナの赤のカードを唱えることもできます。

サンプルハンド②は青が出る土地が3枚、4,5マナの青のカードが2枚、2,3マナの赤のカードが2枚となっています。2,3ターン目に動けるかどうかは赤が出る土地を引くか、2,3マナの青のカードを引けるかどうかにかかっています。

 

この場合ではサンプルハンド①はキープできそうですが、サンプルハンド②はマリガンしそうです。これを確率の面からみてみましょう。

 

 

デッキに8枚の欲しい色の土地が残っていると仮定して計算しました。

2ターン目までに引ける確率は24%、3ターン目までに引ける確率は43%、4ターン目までに引ける確率は58%、5ターン目までに引ける確率は69%です。

 

サンプルハンド①は4ターン目まで綺麗に動ける確率が58%、1ターンパスしても5ターン目までに引ける確率は69%となっています。片方の色しか出ない状態でキープしても分の悪い掛けではないように思います。

サンプルハンド②は2ターン目に動けない確率が76%、3ターン目も動けない確率が57%となります。3ターン目まで動けないと高確率で敗北しそうなので、サンプルハンド②はマリガンしたほうがいいのかもしれません。恐らく、ボムレアが初手にあるなどの明確なキープ理由がいると思われます。

 

初手に2,3マナのカードがないとき

1~3ターン目になんの動きもせずに4ターン目を迎えた場合は、敗北に直結することになります。

このとき3ターン目まで2,3マナのカードを引ける確率はどれくらいでしょうか。

 

 

デッキに2,3マナ域を10枚入れていれば、3ターン目までに引ける確率は52%あります。後手であれば、65%です。そこそこ引くことができるので、4マナのカードにボムレアを持っている場合などはキープを検討してもいいかもしれません。ただ、リスキーな点も理解しておかなくてはなりません。

 

カードが弱いとき

初手に弱いカードやコンバットトリックしかないといような場合はマリガンを検討することもあるでしょう。反対にボムレアが手札にあればふんわりキープできる可能性も上がります。

 

 

ボムレアが初手に来る確率を計算してみました。ボムレアが1枚のとき18%、2枚のとき32%、3枚のとき45%、4枚のとき55%、5枚のとき64%、6枚のとき71%となりました。

本当にボムレアでしか勝てないレベルのデッキではボムレアを求めてマリガンするのも悪くないと思います。

 

Bo1の初期手札補正

Bo1の場合では初期手札に補正がかかっています。ソースは下記となります。

 

良い機会なので、BO1における初期手札決定のアルゴリズムについてお伝えしておきます。MTGアリーナのBO1(1本先取)のモードでは初期手札を決定する際に特別なアルゴリズムが適用され、「勝負にならない」手札になる可能性を軽減(ここが重要です)しています。BO1のモードで初期手札を引く際に、ゲームクライアントは複数の初期手札を引き、その中から土地と呪文の枚数がそのプレイヤーのデッキの期待値に最も近いものを選択する傾向があります(ここが重要です)。これにより、期待値通りの初期手札になる可能性が上がり、期待値から大きく離れたものにはなりにくくなっています。繰り返しになりますが、このシステムは理想の手札をもたらすためのものではありません。(土地0枚や土地7枚といった)初期手札の時点でゲームの敗北が決まるような状況を緩和するためのものです。

MTGアリーナ:パッチノート 1.12.00 (2020年9月17日)

 

検証してみた

「3つの初期手札を引き、その中から土地と呪文の枚数がそのプレイヤーのデッキの期待値に最も近いものを選択する」場合、実際にやってみるとどうなるでしょうか。

エクセルなどで計算するのは大変なのでpythonでプログラミングして確かめてみました。モンテカルロ法という技法で10万回試行して分布から確率を出すという力業です。

 

 

結果はかなり極端なものになりました。土地の期待値が3以上か3以下かが極めて重要でそれ次第で大きく結果が変わります。なので土地の枚数自体とはそれほど相関がなく、3枚のときが約68%前後になり、期待値が振れた2枚か4枚のどちらかの方が25%前後になるというような結果になりました。

 

公式がいう傾向のように土地の枚数自体とほとんど相関しないのが正しいのでしょうか?

 

その答えを出すために、実際にMTGアリーナでマリガンして確かめてみましょう。

リミテッドでの検証は難しいので、スパーキと対戦できる構築60枚で、それぞれの土地枚数で100回マリガンしてグラフにしてみました。今度は手動での力業です!

 

 

はい、というわけで、「3つの初期手札を引き、その中から土地と呪文の枚数がそのプレイヤーのデッキの期待値に最も近いものを選択する」という公式の考え方とは違うものが出ました。

公式の記事でも「傾向があります」と「傾向」と書いているので間違ってても多少は仕方ない気もしますが……

公式がアルゴリズムを公開している訳ではないので、これ以上の分析は闇の中ということでしょうか。

 

気を取り直して結果を見ると、ある程度土地の枚数と相関がある結果となりました。

リミテッドや構築で土地枚数を決める際に是非、参考にしてみてください。

 

まとめ

この記事ではリミテッドにおけるマリガンについて考察しました。

ある程度の確率をもとにキープするか否か検討する機会が持てたので記事を書いてよかったなと感じました。

確率をいろいろと書きましたが一番重要なことは、どんな状況であれ立ち止まって考えることだと思います。

ここまでお読みいただきありがとうございました。何か疑問点などあれば連絡いただけると嬉しいです。

 

 

スポンサーリンク