この記事ではMTGアリーナにて2023年1月に行われる予選ウィークエンドに向けた「アルケミー」環境とその調整の記録です。
この記事の目次
アルケミー環境
ここではアルケミー環境についておさらいしていきます。「アルケミー」は大型大会がほとんど開催されていないことからデッキの研究速度が他のフォーマットに比べて遅い傾向にあります。
「兄弟戦争」が発売され、12月14日に「アルケミー:兄弟戦争」が実装されたことで最新のカードプールとなっています。
「アルケミー:兄弟戦争」がもたらしたもので最大の影響を与えているのが《波の巨人、クルシアス/Crucias, Titan of the Waves》でしょう。実装直後はそこまで使用されていなかったものの徐々に採用が増え、ラクドスミッドレンジでは3~4枚採用されるのが当たり前になってきました。《波の巨人、クルシアス》の強さのひとつは手札にあるカードを望む上下のマナ域のカードに交換することができます。
次に各デッキをみていきます。
赤単ゴブリン
おそらく、Bo3の現状トップメタは「赤単ゴブリン」です。「アルケミー:兄弟戦争」実装前にトップメタとなっていたデッキです。
「赤単ゴブリン」は《ゴブリンの流入結界》をデッキの核とした部族デッキです。毎ターン、ゴブリンカードを手札に加えることができ、アドバンテージを獲得していくことができます。これによって、複数のゴブリンを戦場に展開して有利盤面を作っていきます。
ゲームのフィニッシュ手段としては《雄叫ぶゴブリン》が最も強力です。全体のパワー修正と速攻付与によって10点程度であれば簡単にライフを削ることができます。
「赤単ゴブリン」の弱点としては《ゴブリンの流入結界》と《雄叫ぶゴブリン》が非常に強力ゆえに、これらのカードへの依存度が高いことです。この2枚に対処されてしまうとカードパワーが並みの部族デッキとなってしまいます。このデッキをプレイする際には《雄叫ぶゴブリン》が生き残るように気を付けたプレイングをする必要があります。
また、《波の巨人、クルシアス》を採用したラクドスゴブリンも派生形として研究されているところです。《怪しげな統治者、スクイー》などの3マナのカードを捨てて《ゴブリンの流入結界》を確定サーチする動きが強力です。
ラクドスサクリファイス
「ラクドスサクリファイス」は《鬼流の金床》にアーティファクトトークンを生成したり、合わせて《血の芸術家》でドレインするというようなデッキになります。多数のトークンがブロッカーとなるのでアグロデッキに強いのが特徴です。
「兄弟戦争」及び「アルケミー:兄弟戦争」で新しいカードがデッキに入ることがなかったので、他のデッキに比べると相対的にカードパワーが落ちているのが気になるところです。
「ラクドスサクリファイス」の弱点は「兄弟戦争」のカードである《兄弟仲の終焉》が効果的に効いてしまうことです。赤いデッキのサイドにはほぼ《兄弟仲の終焉》が入っていると考えてよく、サイド後は不利なマッチを強いられるでしょう。また、《ギックスの命令》も苦手としています。
ラクドスミッドレンジ
新規に《波の巨人、クルシアス》が追加されたラクドスカラーのミッドレンジデッキも強力なデッキのひとつです。
《鏡割りの寓話》と合わせて3マナ域が非常に強力になりました。
《波の巨人、クルシアス》の最も強い動きとしては《絶望招来》にアクセスすることでしょう。宝物が生成されることで、4ターン目の《絶望招来》も視野に入ります。他にも3ターン目に3/3ブロッカーを立てつつ1マナの除去呪文を唱えることができるといった動きもでき、宝物によるマナ加速で後手番をひっくり返すことができることも魅力のひとつです。
同系にグリクシスミッドレンジもあり、《死体鑑定士》や《邪なる大魔導士、ターシャ》などが採用されています。
エスパーミッドレンジ
「エスパーミッドレンジ」は《運命の占者》、《ギスヤンキの戦士、ラエゼル》といった強力なクリーチャーを使用することができるカラーになります。
再調整された《運命の占者》ですが、未だ強力なアドバンテージを稼げるクリーチャーです。《運命の占者》を軸にデッキが組まれているといってもいいでしょう。
赤単アグロ
「赤単アグロ」Bo1ではトップメタの一角です。
特にアルケミーのカードである。《ティーフリングののけ者》を連打する動きは勝利に直結します。
ナヤお祭り騒ぎ
「ナヤお祭り騒ぎ」はセレズニアライフゲインの構成に《舞台座一家のお祭り騒ぎ》を加えたデッキです。《舞台座一家のお祭り騒ぎ》が加わったおかげで、盤面の展開力が高いのが魅力です。
アグロコンボデッキに近いので、コントロールに近いデッキを不得意とします。また、リソース回復手段に乏しいのでロングゲームがやや苦手です。Bo3のサイド後ではエンチャントである《舞台座一家のお祭り騒ぎ》はトップTierの「赤単ゴブリン」の《ゴブリンの流入結界》対策のとばっちりを受けるので、簡単に処理されやすいです。
ジャンドリアニ
「ジャンドリアニ」はデカスロンのBo1アルケミーイベントに際して、にわかに流行り出したアーキタイプです。《波の巨人、クルシアス》を主軸に据えています。
《波の巨人、クルシアス》と《鏡割りの寓話》で墓地に落ちたカードは《暗黒時代の後継、ジャーシル》で使いまわしてアドバンテージを得ることができます。
また《部品の組み立て》で《産業のタイタン》を早期に釣り上げて盤面制圧できるのが強みです。
デッキ選択、調整
予選プレイインではBo1とBo3のイベントがあります。
Bo1:ナヤお祭り騒ぎ
まずは、Bo1のデッキ選択について。Bo1は「赤単アグロ」が最も多いと考えられる環境です。なので、「赤単アグロ」に強いデッキを選択するのが自然な考えでしょう。
デッキ選択の段階で「赤単アグロ」、「ラクドスサクリファイス」、「グリクシス」、「マルドゥ天使、」「ナヤお祭り騒ぎ」を試しました。試したデッキ数は少なめでしたが、この中では「ナヤお祭り騒ぎ」の勝率がひとつ抜けて高かったので「ナヤお祭り騒ぎ」を調整することとしました。
調整したデッキリストはこちら。
《月皇の古参兵》、《裕福な亭主》、《祝福されし者の声》、《舞台座一家のお祭り騒ぎ》、《審問官の隊長》が確定枠だと考えています。
《審問官の隊長》はクリーチャーが20枚以上確保できていないと能力が不発に終わるので、安全を見てデッキは65枚にすることにしました。これは一番最後の調整の結果です。
《舞台座一家のお祭り騒ぎ》は4枚で確定に見えますが、4枚採用だと5回に1回程度ゲーム中に2枚ダブります。《舞台座一家のお祭り騒ぎ》を2枚並べても大して強くないので、2枚手札に来るとディスアドバンテージになります。これは無視できない確率だと考えたので《舞台座一家のお祭り騒ぎ》は3枚採用に留めました。
戦場に出たときにライフゲインができるクリーチャーの数は合計10枚としています。これは2ターン目にライフゲインができるクリーチャーを展開できる確率が約80%となり、ある程度妥協できるラインの枚数となるからです。《月皇の古参兵》と《裕福な亭主》の各4枚だけでは枚数が足りないので、《祝祭の出迎え》を2枚追加採用しています。
《月の踊り手、トレラッサーラ》の枚数は悩みましたが、地上は膠着しがちで伝説であるため重複したときにディスアドバンテージとなることから2枚の採用としました。《舞台座一家のお祭り騒ぎ》が先に戦場に設置してあると3枚採用だとまぁまぁかぶります。また、《審問官の隊長》の抽出の選択肢を狭める結果にもなりかねません。
《団結の天使》は最終調整の段階で加わったカードです。フレンドに赤単相手に非常に強くなるといわれて採用しました。1/3のスタッツで赤単のカードのほとんどを止められる点、絆魂と能力で後続の戦力を強化できる点はかなり魅力的でした。
1,2マナ域については16枚を下回ると初手に2マナのカードがある確率が90%を切るので多めに採用したいです。初手に来る確率はキープ率に直結するのでやや高めの方がいいと考えています。
デッキリストの中でも特徴的なのが《救出専門家》4枚採用です。Bo1では「赤単アグロ」の遭遇率が高いため、2マナのクリーチャーは概ねブロックに回るか焼かれるかして墓地に送られてしまう場合が多いです。そこで《救出専門家》で2マナのクリーチャーを釣り上げることで盤面のテンポを取り戻すことができます。《救出専門家》自身も絆魂を持っているので「赤単アグロ」に強いのもメリットです。
《白髪混じりの猟匠》も特徴的なクリーチャーです。Bo1はサイドボート7枚をシルバーバレット枠として使うことができます。主に《宴の結節点、ジェトミア》を持ってきてゲームエンドするという動きが強力です。
《カイラの再建》は《アヴェルヌスの上昇》と枠を争うカードですが、《カイラの再建》の方が能動的なカードなのでBo1ということもあって《カイラの再建》を採用しました。
このデッキを使用して予選プレイインは6-1、デカスロンのアルケミーイベントは7-2で一発抜けと好成績を収めることができました。
Bo3:ラクドスタッチジャーシルサクリファイス
Bo3のデッキ選択については非常に悩みました。Bo3のラダー環境は市川プロの「ジャンドリアニ」、原根プロの「グリクシスミッドレンジ」、Corkeyzさんの「ディミーアルスコ」が多い環境になっていました。Bo1と同様に「ナヤお祭り騒ぎ」を選ぶ選択肢もありましたが、Bo3ではこれらのデッキに厳しい戦いを強いられるため別のデッキを用意することにしました。
アルケミーを回していて、明らかに抜けて強いカードが《波の巨人、クルシアス》と《暗黒時代の後継、ジャーシル》の2枚でした。この2枚は確実に使いたいということでデッキを製作することにしました。そこから、《波の巨人、クルシアス》に強いメタカードを採用したデッキに仕上げる方向で考えることになります。
《波の巨人、クルシアス》は戦場に残っていれば「質」の面でハンド・アドバンテージを稼ぎ続ける非常に厄介なクリーチャーです。スタッツは3/3とそこまででもないので、クリーチャーをある程度用意しておけば積極的にアタックはできないので棒立ちにさせることが可能です。スタンダードでの《放浪皇》をケアした《黙示録、シェオルドレッド》の動きに近いです。ある程度クリーチャーを立たせておくだけで勝利につながっていくデッキというのがアルケミーには存在していて、それが「ラクドスサクリファイス」でした。
「ラクドスサクリファイス」に《暗黒時代の後継、ジャーシル》を組み合わせたデッキがこちらです。
基本的には「ラクドスサクリファイス」に《暗黒時代の後継、ジャーシル》をタッチした構成になります。
自分の中で思い切った構成になったと思うのが《鏡割りの寓話》の不採用です。この環境では3マナドロップとしては《鏡割りの寓話》はやや重い能力で、出てきたトークンも《波の巨人、クルシアス》と《暗黒時代の後継、ジャーシル》にブロックされて一方的に打ち取られてしまう関係にあるので能力を最大限に活かすことができないと考えました。
予選ウィークエンドの記録と反省
予選の結果は下記の通りです。3勝2敗となり勝ち越すことができました。
ジャンドリアニ 〇〇
グリクシスミッドレンジ ×〇〇
グリクシスミッドレンジ ×〇×
グリクシスミッドレンジ 〇×〇
ジャンドリアニ 〇××
5戦通して《波の巨人、クルシアス》とのマッチアップとなり、環境の予測としては正解だった思います。
メインボードはある程度練り上げられていると感じましたが、失敗だと感じたのがサイドボードでした。
対戦相手がサイドインしてくるカードを予測した上でのサイドボードというレベルには練習できていなかったのもあり、毎回不安定なサイドボードとなってしまいました。これは「十種競技」に時間を取られてしまい練習時間を確保できなかったことも敗因です。《敵対するもの、オブ・ニクシリス》についてはほぼ毎回サイドインしていたので、メインボードに昇格もありだったかもしれません。
これらのミスをなくすためにはサイドボードにカードを採用する段階で、どのデッキに対してサイドイン、サイドアウトするのかを明確に決めておく必要があると再認識しました。
まとめ
この記事では2023年1月の予選ウィークエンドの種目であるアルケミーの調整記録について記事にしました。これらの反省を活かして次回の予選も頑張っていきたいと思います!